大徳寺大仙院へ。色無地に尾長鳥帯を締めて。纏っているのは母の道行コート。久しぶりです。
緑の草履は、ゑびすさんの帰りに、祇園ない藤さんで求めました。写真を撮影するのに、苔には触っていません。石の上に乗っています。
横からを見たくて、街中のガラスに映った姿を自撮りしています。
カテゴリー: 秋尾沙戸子のきもの適齢期
「きものを着たい」と思った時が適齢期。形見が舞い込んだ時、海外暮らしを終えた時、日本人の心を確かめたくなった時――。ワシントンDCでの中年留学を機に始めて18年。祖母・母・娘と三代続く着道楽の血が騒ぎ、粋に着こなしたいと奮闘中。失敗例も含め、適齢期を迎えた方々のヒントになれば幸いです。
京都での10年を歳時記にまとめた『『京都で、きもの修行:55歳から女ひとり住んでみて』が世界文化社より出版。日々の着こなしの写真は、インスタグラムに掲載。
2017年3月 紅椿の帯で、花灯路の石塀小路へ
先日の吉田塾の後、花灯路の石塀小路を歩きました。この日が最終日。
東山花灯路は、八坂の塔から北へ、東山界隈の神社仏閣がライトアップされる春の行事です。なかでも路地行燈に照らされた石塀小路の風情は、なんとも幻想的で、人が少なければ、そこに身を置くだけで、とても幸せな気持ちに浸れます。
写真はすべて、塾仲間の八木沢哲雄さんにお願いしました。夜、人のいない隙を狙って撮るのは難儀で、感謝の気持ちでいっぱいです。
足元にご注目あれ。祇園ない藤さんのお草履のデビュー。緑と黄色のコンビなので、この帯なら合うと信じて。後ほど、草履そものをアップしますね。
撮影の後は、ぎおん楽楽へ。ご紹介頂いた女性客陣のコメントは、帯が変わっているから気になっていた、でした。随分前にアンティークのお店で購入。当時は、誕生石のペリドット色にこだわっていたため、目に入ったのだと思います。東大寺修二会のころに締めたくなる紅椿文。作り帯に加工してあるので、急いでいても、すぐに締められます。
書きながら気づきました。この帯にはペリドットの指輪が似合ったのに、すっかり忘れていました。
2017年3月 大徳寺玉林院へ
2017年3月 北野天満宮へ 梅文の帯で
2017年3月 梅小路公園
2017年3月 法要の装い:祖母の十三回忌は提婆品の帯で
3月11日は祖母の十三回忌。厳島神社に清盛が納めた平家納経の提婆品(写真左)をモチーフに織られた帯をデビューさせました。法華経の十二品「提婆達多品」は、女人成仏を謳っており、祖母の成仏を願う意味もあります。
この重厚な帯に合う色無地が我家にはなかったので、京都で誂えました。七回忌までの法要には派手かとも思ったのですが、親戚だけが集まる十三回忌の法要であり、普段はお茶席で着るだろうと考えての選択。これ以外に、チョコレート色、ラピスラズリ色、深緑も候補でした。チョコ色はお茶席でよく見かけるので止め、ラピス色は華やか過ぎるので止め、結果、北極星の色にした次第。地紋は、高野槙。めずらしいですね。
色無地は、すでに京都と水戸で着ています。鳳凰の帯以外にもいろいろ合わせやすいので、満足しています。
2017年3月 吉田塾へ紅椿の帯で
東大寺二月堂の修二会の季節。3月半ばまでは紅椿を纏いたくなります。母の紬に紅椿の帯を締め、吉田塾へ。
伺ってみると、雛飾りが・・・。そうです。京都の旧家は、旧暦で飾るところも多いのです。今年は30日がその日にあたるとか。だったら、ひいなの帯を締めたらよかった、と一瞬思ってもみたけれど、いえいえ、吉田孝次郎さんは東大寺のお水取り(修二会)の話をされると確信していたから、この帯を選んだんです。その予感は的中しました。これでいいのです。
二月堂に鎮座する十一面観音に捧げる椿の造り花の和紙は、染司「よしおか」が黒谷の和紙を紅花で染めて納めています。試別火 (ころべっか) という修行期間のなか、花拵えの日に連行衆と堂童子が拵えるのです。支子で染めた黄色い和紙を花芯とし、紅花染めの赤3枚と白2枚の和紙で椿の花とします。吉田家の玄関には、その椿が飾られていました。季節の室礼、さすがです。
今回のテーマは朝鮮毛綴れ。野生のヤギや羊の毛で織り、綴れの上に絵を描いています。触ってみると、ザラザラしています。山鉾の懸装にも使われた時代があり、山鉾町には数点、残っているようです。この手法は世界でも朝鮮半島にだけ存在するのですが、韓国からいらした方によれば、すべて織る手間暇をかけて表現せず、色を塗ってしまうところが、朝鮮民族らしいとのこと。アジア各地を歩いてきた私の浅い経験でも納得してしまうお言葉。実際、その血を引く末裔が仰るのだから、なるほど、そうなのでしょう。
2017年3月 祇園ない藤の、春を呼ぶ草履
「祇園ない藤さん」でみつけた草履です。今年のゑびすさんの帰りに。
年甲斐もなくブリブリかも、と悩みつつ、しかし、春を待ちわびる心にはピッタリで、最近、よく履いています。ぽっこりのような形が可愛いでしょ。横から見て、梅色とも桜色とも。
母と祖母の形見を生かそうと和服の着こなしに挑戦してきた私ですが、草履は家にあった「ぜん屋」の鼻緒を替えるだけで、あとは三越のワゴンセールで済ませてきました。自称「西麻布のイメルダ」が草履に興味を持ったら最後、どんだけ散財するか怖かったからです。
スタジオの仕事が多かった時代には、泥なしのパンプスをキープする必要があり、パリ、NY、香港、東京でシャルル・ジョルダン製を買い漁っていました。90年代まではジョルダンがダントツ、華奢でスタイリッシュだったのです。
年の路上転倒以来、和洋とも履物を見直しています。ない藤さんのお草履は、歩きやすい上、デザインが面白い。上から見ると四角くて、横から見ると、ぽっこりみたい。そう、実は横からの景色も大切なのだと、教えてもらった一足です。