亀岡の料理旅館「楽楽荘」での茶狂会。今月は蛍。執筆で引きこもり誘惑を撥ね退けてきた私にとっては、久しぶりの参加。楽しい会なので、遊び心たっぷりの向日葵にしました。
絽ちりめんは6月でも大丈夫。この向日葵、花を裏側からも描いていたり、葉っぱの色が微妙にあせているものがあったり、大人っぽいのが気に入りました。10年前、アンティークきものに手を染めるキッカケとなった着物です。
なかなか合う帯がみつからず、この着物を持って銀座中の店を歩きまわり、出会ったのがコレ。ブローチのトンボを飛ばしました。買った直後NYに行ったとき、あの店この店で購入。流行っていたんです、昆虫のブローチが。帯留にしているのは、ブルーミングデールでみつけたトンボのナイフフォークレスト。帯に糸で縫いつけたら糸が切れてしまったので、荷造り札のワイヤーで留め、三分紐を通しています。本当は緑がいいのですが、翡翠の龍で使いすぎて痛んでいるので、花と同じ黄色にしました。
こういうレトロな着物が、待合という和の空間、明治の洋館という佇まい、それぞれの風景で、どう見えるか、研究材料にしてくださいね。楽楽荘は、トロッコの生みの親でもある田中源太郎氏の生家でした。お庭も、七代目小川治兵衛作。南禅寺界隈別荘を手がけた方です。
そういえば、AKIOは蛍の帯も持っていただろう、との声も聞かれそう。そうなんです。でも明治の帯につき、端が擦り切れてきたのが難。普段はよくても、お茶室に入るのに失礼な気がして、選びませんでした。
夕食の後、川沿いの森に生息する蛍を堪能しました。隣の田んぼから蛙の合唱が聞こえてきて、若冲の蛙の帯が頭をよぎりましたが、蛙の存在までは想定できず。蛍狩で足場が悪いのは覚悟の上。履いているのは下駄草履。草履風なれど、下は桐で出来ているので、軽いのです、とっても。 あ、トンボは勝虫。武士が好んだ文様です。
カテゴリー: 秋尾沙戸子のきもの適齢期
「きものを着たい」と思った時が適齢期。形見が舞い込んだ時、海外暮らしを終えた時、日本人の心を確かめたくなった時――。ワシントンDCでの中年留学を機に始めて18年。祖母・母・娘と三代続く着道楽の血が騒ぎ、粋に着こなしたいと奮闘中。失敗例も含め、適齢期を迎えた方々のヒントになれば幸いです。
京都での10年を歳時記にまとめた『『京都で、きもの修行:55歳から女ひとり住んでみて』が世界文化社より出版。日々の着こなしの写真は、インスタグラムに掲載。
2015年6月 ポピーの単衣@エルメスパーティ
エルメス大好きの友人が、コレクションに誘ってくれました。ご主人をすでに送り出された方ゆえ、代わりに私がお供させていただいたのです。会場は上野の東京国立博物館。
エルメスの洋服を持っていない私。なので、和服を選んだのですが、持っているエルメスバッグがオレンジのみ。それにあわせられる単衣となれば、これしか思いつきませんでした。秋冬なら、いろいろあるのに・・・。
白地にオレンジのポピー。真ん中がオパール色ゆえ、帯締めは同じ色に。帯は、朱から白銀へのぼかしの絽つづれ、帯留は翡翠のドラゴンです。あ、襦袢は絽のくもの巣文。袖口がまくれると、わかりますね。
こんな日に備えて、エルメスのスカーフで帯を作っておけばよかった。どの柄で作ろうかなどとグズグズ迷っていると、突然、こういう日が巡ってくるのですね。
バッグには鳥居のチャームをつけていました。上客だけが買える枠で、友人が手に入れていたものです。
超長身モデルがランウェイを歩いた後は、庭園で立食パーティ。雨支度をしていきましたが、降り始めたのはデザートのころ。友人の泊まるペニンシュラホテルへお邪魔して、夜中まで喋り続けたのでした。バーには行っても客室に入るのは初めてだったので、ちょっと感動しました、日本のペニンシュラ。