指輪でもペンダントヘッドでも、ラリマーを身に着けていると、必ず見知らぬ人に話しかけられる。この着物もなぜか、同じ現象が起きる。
三条通を歩いていたら、二人のお姉さまたち(芸妓さんではなく、主婦風)がこちらを見て何か話している。京都だから、きっと私の着方に不都合があるに違いないと怖れおののいていると、「かわいらしいね」と大きい声で話しかけてくれた。おおきに。ほっとしたあ。
以前も東京で某料亭の女将さんに「かわいらしい着物やね、そんなん今ないからね」と言われたことがある。若々しい柄の絽の着物が減っている中、60代以上の女性には、その価値がわかるのかもしれない。これは洗い張りした状態で箪笥にあったもの。
他方、京都人は男たちも着物にうるさい。「祇園祭が始まったら、毎日、着物でしょ」と言ったのは祇園の旦那衆の一人。なるほどと思って、写真撮影が大変な取材以外は和服を着ているのだが、汗をかくので、襦袢を毎日洗いたくなるのだ。
今日も街を歩いていて遊説の気配にそちらに行ってみると、安倍総理がやってくるというので、市役所前に黒山の人だかり。暑さのあまり、御池通りにある店に入りアイスコーヒーを飲んでいると「絽の着物は暑いやろ」と隣の中年男性が話しかけてきた。スタッフの札を下げていたから、地元の党関係者らしい。
もちろん、さらっとした肌触りの上布のほうが涼しいに決まっている。でも、前の晩に着たから麻の襦袢を洗濯してしまったのだから、絽の襦袢を纏い、この着物を選んだのだが、こういう突っ込みをする京都の男はん、どないやろ。せっかくお姉さんたちがほめてくれたのに。やっぱり京都は厳しおす。
ところで、この季節はつい生ビールを欲してしまう。まだ明るくても夕刻になれば、伊右衛門カフェでプレミアムモルツのハーフ&ハーフを飲みたい衝動を抑えきれなくなる。最近はPCコーナーがあるので、「おひとりさま」でも気楽に入れるのがうれしい。