中東の渦に巻き込まれた日本

日本の人質事件、ヨルダンにしてみれば、甚だ迷惑な話だ。どんな莫大な援助を手にできようとも、日本人ひとりのためにヨルダン国民を犠牲にするわけにはゆかない。

そもそも、このタイミングに中東歴訪を企画したのは誰なのか。財界からの要請もあったやもしれぬが、今年は戦後70年という世界共通の節目であり(昨年は第一次世界大戦勃発から100年)、暴動・戦争が起きやすいとの見方が、暦の上でも明白な年である。各国のトップはもちろん、そのことを熟知している。安倍総理だけ知らないはずがないのだ。

おまけに、昨秋には人質がとられていたわけで、そのリスクを計算できないわけもあるまい。 なのに、イスラム国を名指しして刺激するスピーチを行い、イスラエル首相との2ショットが世界中に配信されることは、極めて危険。あの映像を見た瞬間、つまりは人質事件が明るみに出る前から、不吉な予感がしていた。

他方、サウジの新国王が、前国王の側近などを排する綱渡り人事を行っている。極めて危険な状況だ。イスラム国がいつ攻め入るかもわからない。その流れの中に日本が組み込まれたことで、国民一人ひとりの命も脅かすことになったことを私たちは覚悟せねばならない。

中東の中でジタバタするより、ロシアなど中東に強い大国のパイプも使うべきではないか。地球儀を俯瞰する外交を目指すなら、そのくらいやってのけるべきだ。