最近、東京に行くと銀座界隈を訪れる機会が多い。久しぶりだからかな、新鮮な印象を受ける。数年前は、昔の銀座の面影が消えることに抵抗を覚えていたのだが、時間を置いて訪れてみると、どうしてどうして、見事にリバースに成功している。
次々に誕生した海外ブランドの路面店ビルが、銀座の街に「新たな洗練」を生み出しているのだ。昼間は気づかなかったのだが、夜はビル外壁の照明デザインが各々美しかった。ブルガリの蛇モチーフ、シャネルの壁面に70万個つけられたLEDの織り成すロゴとカメリアとト音記号の文様に、しばし釘付けになるほどだ。日本的でも江戸的でもないのだが、国際都市としては、パリとかNYにない別の魅力がある。こんなに綺麗で安全なら、外国人が訪れたいわけだ。
他方、飲食店は安価な店が増えている気がする。友人に誘われて入った「N9Y」なるグリルのお店は、会社帰りの団体客で一杯だった。肉を中心に、メニューはアメリカ風。ワシントンDCのジョージタウンにありそうな店である。
他方、裏通りに行けば、「300」なる地下のバーが、小皿料理から生ビールや山崎のハイボールに至るまで、すべて300円で楽しめる。いずれもパイプむき出しの経費節減インテリアなのだが、「300」の場合は、どーんと大きなテーブルがあるのと、壁にカウンターがあるのみ。訪れる客は、一人か二人。グループでは、服のセンスが悪くない若い男子。20代後半と見た。給料は安いのだろう。居酒屋ではなく、でも、こういう空間なら訪れるのに許容範囲といった人々だった。
カジュアルに、それなりを楽しめる、というのは、「俺のフレンチ」が流れを変えたのかもしれない。
昼間のブルガリやシャネルから、夜のデフレ対応飲食店まで、客層の厚さに驚くとともに、いずれも、都会的デザイン性をキープしているところに、銀座の潜在力を感じる。