このところ、恩師のイベントが続き、ドタバタと忙しい日々が続いている。あえて言い訳をすると、ブログを更新できずにいたのも、そのことと無縁ではない。
ひとつは上智の大学院教授・寺田勇文先生還暦のお祝い。もうひとつは、15日に朝日ホールで開かれる書家・石川九楊先生の講演会である。前者は世代を超えたゼミ生、後者はいろいろな職種の塾生、いずれも素人による手作りなので、遅遅として進まないことも多い。恩師への感謝の気持ちを形に出来るのは嬉しいのだが、素人でチームを組むのは時間がかかる。
金曜日は書の稽古の後、20時から打ち合わせが始まった。全体の運営から入ったので、演出にまつわる打ち合わせは23時半から。シナリオを任された年配者がワープロを打てないため、司会の私が打ち込み役を担うことになる。最初にシナリオを手がけた人の思いも尊重しつつ、途中から採択されたその年配者の案を尊重しつつ、両方に不満が残らぬように打ち変えて昼に完成させたものが、この打ち合わせで一気にひっくり返る。お二人が手探りで構成案を出していたのだが、どうやら先生の気持ちに追いついていなかったらしい。それでも、石川先生の意思が確認できたので、私としては、そこに沿って作り変えればいい。これで楽になった。案を出した人たちに気遣わずに済む。
土曜日は教授還暦の祝宴の日。その前に一本打ち合わせを入れ、その後、準備に入る。こちらは青山の「フィアットカフェ」が会場で、赤を基調にした会場は、還暦にうってつけだ。
先生には秘密裏に進める祝宴運営は、先生の鶴の一声とはゆかず、価値観や意見の違う若い世代との擦り合わせが簡単ではなかった。一般社会とは一線を画す、大学院という場での若い世代の考え方が想像以上に自分とは乖離していて、現在の日本社会で起きていることの断面を見た思いである。
夜は「自分が主役になることは人生にそうないから」とにこやかにおっしゃる先生に、三次会までご一緒した。なるほど、「結婚式は(主役率が)半分」なのだから、出版記念会や還暦、退官のお祝いと、限られた機会のみ主役を張るのは確かである。
世代をつなげる中心的役割を担った研究者夫婦によって、心温まる文集も作成された。今日になって読み返して、改めて先生の生きざまそのものが、現在、研究者として活躍している人々に大きな影響を与えてきていることを確認する。
私自身は、教育者とはこうあるべきだ、と寺田先生を尊敬してきた。研究者としての資質と教育者としてのそれが共存する人は、そうはいない。
院生だったころから、還暦のお祝いは自分が開くとイメージしてきた。研究者にならなかった私はゼミ生のなかでも異端児のままだが、それでも、そう名乗りたくなること自体、先生の魅力を物語っていると私は思う。
還暦の祝宴
2010.05.09