映画「ベストキッド」

機内で観た映画「ベストキッド」が面白い。これはリメイクだというのだが、オリジナルを知らないので、素直に感動できた。

最初のは日系人から空手を習う設定だったらしい。今回は舞台が北京である。母の仕事で転校し、中国人からの苛めにあう黒人の少年が、老師から中国武術を学んで、クラスでポジショニングを得るという物語だ。

年老いたジャッキー・チェンがいい。少年がすばらしい。どこで見つけてきたかと思えば、ウィル・スミスの息子と聞いて納得した。途中に出てくる奥地の山の頂はまさにパワースポットで、実在するなら、そこに行ってみたくなる。日本では、この山は話題になっていないのだろうか。

そこに映し出されるのは、中国のポテンシャルである。経済発展に伴って金の亡者になっている連中、つまりは東京の銀座などで買い物をする連中から醸し出される拝金主義の空気や、礼儀をわきまえず自己主張全開で押し寄せてくる中国人像とは全く違う。中国武術の奥義を通して、神秘的な側面をフィーチャーしている。全世界に中国の言い知れぬパワーを思い知らせ、アメリカの次の超大国として受け入れさせようとする意図さえ感じるのだ。

くわえて、母親が仕事で中国に行くという設定も、人々が職を求めて国境を越え、国家などなくなるという方向へと人々を誘っているようにも見受ける。それが豊かな白人ではなく、黒人であるところがミソである。

近々ハリウッドも中国に買い取られ、こういう「中国は凄い映画」が増えていく予感がするのだが、それを差し引いても、充分に楽しめる映画でだ。中国人と黒人の共存は日本では未だ馴染まないだろうが、これは世界のトレンドなのである。

いま世界で起きようとしていることを知らせる意味でも、苛めに悩む子どもたちが生きる勇気を持つという意味でも、親子で観る価値はありそうだ。