新歌舞伎座、予想よりいい感じです。ちょっと鳥肌たちました。設計したのが隈研吾さんで良かった。その幸運に、日本人の一人として、素直に感謝します。
多くの歌舞伎ファンは、彼がモダニズムに走るのではと懸念したはず(実は私もその一人)。そうした声や役者・スタッフの思いを真摯に受け止めつつ、他方、施主からの要求、それにモダニズム建築の中にいる同業者目線との狭間で、相当に悩まれたようです。歌舞伎座ならではの「赤」を使うことも、瓦屋根を使うことも、モダニズム建築ではご法度らしい。
でも、ご安心を。第四代吉田五十八の艶っぽさを受け継ぎ、平成の技術を駆使してバージョンアップした形になっています。入り口や劇場の天井が高くなり、芝居小屋が壮大で洗練された空間に。照明もやわらかくて温かい。それに大間に敷き詰められた色鮮やかな鳳凰の緞通。これがいいのです。これまでは渋く紬の着物でないと違和感を覚えた歌舞伎座に、はんなり柔らかものを着ていこうという気になります。
私としては、劇場を高層ビルの中に入れろという圧力に屈さず、唐破風屋根を残してくれただけでも感謝です。くわえて、第三代、第四代をリスペクトし、「隈研吾」を前面に押出さなかったことにも。
謙虚に皆の声を聞く柔軟さと、平成の採算性の中でそれを最高の技術につなぐ頭脳を持つ隈さんでなければ、こうはならなかったと考えます。
書きながら、また涙が出てきた。・・・本当に良かった。