帰国してみると、中国問題で、東京にプチナショナリズムが広がっていた。
友人の実家の近所では、いきなり自民党のポスターを貼った家が2軒あるのだという。民主党に任せれば、日本が中国に飲み込まれると敏感に感じたらしい。そこは東京都下で一軒家が並ぶ地域である。
都心でも、あるビルの入り口で若いカップルの、中国が卑怯だという会話が聞こえてきた。それは飲み屋でもなんでもない昼間の日常会話である。
東京で中国人観光客が増えたのは数年前からの現象だが、彼らのマナーの悪さが鼻につき、日本の若者の間に嫌中感が徐々に広がっていた。そこに今回の騒動で、かなり若者のベクトルがナショナリズム的方向に移行している。
ヒステリックになるのは良くないが、しかし市井の人々が中国の脅威に敏感になったとすれば、いい傾向である。安易にアンチ自民で民主党を支持した人々には、それがどういう意味かを考えるチャンスになったであろう。反米感情の果てに待っているのは、中国に飲み込まれる日本の姿にほかならない。いまの民主党政権は、その地ならしをしているとしか見えない。
戦前からアメリカが日本をどうするかシナリオが存在したように、中国も着々と日本支配のシナリオを準備してきている。反米的左翼運動を展開してきたグループは、中国も同じ大国の癖(へき)を持っていることを理解しているのだろうか。
いまの日本に求められるのは、反米でも反中でもなく、小国として大国に飲み込まれない知恵なのである。それを持ち合わせた政党が存在しないことが悩ましいのである。