NYにやってきた。
JFK空港から15ドルのバスに乗る。これで2回目だ。
大きなバスでグランドセントラル駅に着いて、そこからホテル組とペンステーション組が分かれて、荷物とともに目的地に送り届けられる。ワシントンDCのように、乗り合いシャトルもあるのだが、15ドルの値段に引かれて、これに乗ってしまってしまった。前回は、とんでもないハプニングが起きたことを、すっかり忘れて。
あれは一昨年の12月だったと思う。駅で乗り換え、イタリア人と二人、後ろの座席に乗ったのだが、ホテルに着いてみると、私のスーツケースが無い。たしかに、大きなバスから荷物を出し、各自が道路を渡って、ドライバーに荷物を渡したのだ。一体、どこに消えたのだろう。いや、今日から、どうやって私は過ごせばいいのだろう。
怪しいのは、この、ろくに英語が通じない中国人ドライバーだ。事態の重大さも飲み込めていないらしい。もしも見つからなければ許さない。彼に思い切り抗議して、同僚と連絡を取らせた。こういうとき、なぜか急に英語が上手になる私だが、相手も相手で、絶対に自分のミステイクは認めない、荷物が勝手に車から降りたといわんばかりの開き直りようである。こういうときは、引いたら負け。徹底的に闘う。
その車に乗った場所に戻ってみると、なんと、私の赤いスーツケースは道路にポツンと放り出されているではないか。誰にも持っていかれなくて本当に良かった。資料や日本からの土産物がどっさり入っているのだから、初日に消えては、困るのである。
道路に残されたスーツケースを見張っていて同僚たちは、私にすこぶる同情的だった。どうやらチャイニーズの彼には、こういうポカが頻繁にあるらしい。
にもかかわらず、彼は一度も謝らない。ホテルに送り届けた段階で、チップを要求する、厚顔無恥な輩である。せめて最後に一言謝ってくれれば、チップはチップとして払うつもりだったのだが、またまた腹が立ってきた。彼のせいでホテルに着くのが遅れたのだ。しかも、ホテルでスーツケースを卸してくれたのは、ベルボーイであって、彼ではないのに、なぜ彼がチップを要求できるのだろうか。
とはいえ、転ばぬ先の杖である。以来、いかなるときも、自分のスーツケースが載せられるのを見届けてから自分が乗り込むことにしている。だから、今回は何事も起こらないはずだった。しかし・・・
再び呆れた事件が起きた。今度は途中で投げ出す、という形で、である。
事を起こしたのは、やはり中国人ドライバーだった。彼は私のホテルをみつけると、後ろを指さして、「あそこだ。ここから歩いたほうが早い」そう言うと、さっさと車から降りて、私の荷物を路上に置いたのである。そして、 資料が一杯つまったスーツケースを自ら引きずって、横断歩道を渡れというのだ。
それはおかしいと抗議してみたものの、スーツケースは既に降ろされている。彼の中では、ぐるっと周って前につけるのは大変だという言い訳つき。根っからの怠け者なのである。しかも、当然のように、チップを要求する。それは筋が違うだろう。彼には、大型バスから降りるときに、既にチップを渡している。それでも、ホテルに着いた段階で、さらに渡すつもりで用意していたのだが、仕事を真っ当しない人間が、なにゆえチップを要求 できるのか。ずうずうしいにもホドがある。
乗るときには、つい黒人女性の明るさに誘われて切符を買ってしまった私だが、思えば、この会社で中国人にあたると、まともに仕事をしないことを忘れていた。ラテンアメリカやアフリカからやってきている人々は気持ちよく仕事をこなすのに、なぜだろう。前回と同じかどうかさえ記憶にないが、彼のせいで、華人系移民の印象が悪くなる。
今度は乗り合いバスにしよう、と前回も誓ったことを思い出した。こうやって書き留めれば、もう忘れないはずなのだが。
NYエアポートバスにご用心
2010.03.17