ワシントンハイツ:GHQが東京に刻んだ戦後

秋尾 沙戸子著
2009年新潮社刊/定価1900円/ハードカバー/384頁
ISBN978-4-10-437002-3

第58回日本エッセイスト・クラブ賞
            審査報告および受賞挨拶はコチラ>>

『ワシントンハイツ』書評および著者インタビューはコチラ>>

銀座と並んで欧米のブランド店が軒を連ねる東京の表参道。明治神宮の参 道であるあの通りに西欧のブティックがひしめいているのはなぜだろう。それは、神宮の第一鳥居のその先、現在のNHK、オリンピック競技場、それに代々木 公園のあるところに、「ワシントンハイツ」という米軍住宅があったことに端を発する。

空襲で家を失い、日本人が食べ物に飢えていた時代、フェンスの中にはぴかぴかの「リトルアメリ カ」があった。800世帯もの青い芝生と白い家々、劇場や教会や学校やグラウンドの存在は、そこに出入りするアメリカ車とあわさって、「豊かさとは何か」 を日本庶民に見せつけ、「アメリカ好き」にするように意図されていた――。

本書は「ワシントンハイツ」が造られた経緯・過程に始まり、東京オリンピックでその姿を消して いくまでの街の歴史を描きながら、アメリカの「日本占領」を日米双方の証言と文献から描いている。皇居前の第一生命ビルのGHQが日本の政治改革の拠点な ら、明治神宮の隣に存在した「ワシントンハイツ」は約20年、日本人のライフスタイルをアメリカ化する拠点として、強烈な磁力を放っていた。GHQは焦土 と化した日本をどうデザインし、我々の生活に何を埋め込んでいったのか。憲法に女性の権利が盛り込まれた経緯や日本のキリスト教化計画など、戦後世代の知 らない逸話を通して、現在の日本が見えてくる一冊。

  • 目 次
  • プロローグ
  • 序 章  帝国アメリカの残像
  • 第1章 青山表参道の地獄絵図
  • 第2章  ある建築家の功罪と苦悩
  • 第3章  「ミズーリ」の屈辱
  • 第4章 乗っ取られた代々木原宿
  • 第5章 オキュパイド・ジャパン
  • 第6章 かくて女性たちの視線は
  • 第7章 GHQデザインブランチ
  • 第8章 まずは娯楽ありき
  • 第9章 有閑マダムの退屈な日々
  • 第10章 尋問か協力か
  • 第11章 GHQのクリスマス
  • 第12章 立ち上がる住民たち
  • 第13章 諜報部員「ニセイ・リンギスト」
  • 第14章 アイドル誕生
  • 第15章 瓦解する「アメリカ帝国」
  • 第16章 そして軍用ヘリは舞い降りる
  • 終  章 視界から消えた「占領」
  • あとがき